大切な家族が亡くなったあと、避けて通れないことの一つが「相続」です。
「相続って、お金持ちだけの話では?」
「親の家は、そのまま住んでいれば大丈夫?」
「亡くなった人に借金があったら?」
「兄弟で財産を分けるとき、どうすればいいの?」
相続は、決して特別な家庭だけの問題ではありません。
預貯金が少なくても、実家や土地があれば相続の手続きが必要になることがあります。
今回は、初めて相続に向き合う方にも分かりやすいように、基本的な仕組みから必要な手続き、相談先まで順番にご案内します。
※この記事は2026年10月時点の制度を基本にした一般的な解説です。個別の事情や法改正によって扱いが異なる場合があります。
1.そもそも相続とは?
相続とは、亡くなった方の財産や一定の権利・義務を、法律で定められた相続人などが引き継ぐことです。
亡くなった方を「被相続人」、財産を引き継ぐ方を「相続人」といいます。
相続の対象になる財産には、次のようなものがあります。
プラスの財産
- 現金・預貯金
- 土地・建物
- 株式・投資信託
- 自動車
- 貴金属・骨董品
- 貸付金など
マイナスの財産
- 住宅ローンなどの借入金
- クレジットカードの未払金
- 未払いの税金
- その他の債務
相続では、プラスの財産だけでなく、借金なども引き継ぐ可能性があることを覚えておきましょう。
なお、受取人が指定されている生命保険金などは、原則として受取人固有の財産となり、通常の遺産分割の対象にならない場合があります。ただし、相続税の計算では「みなし相続財産」として扱われることがあります。
2.誰が相続人になるの?
民法では、相続人になる方の範囲と順位が定められています。
配偶者は、法律上の婚姻関係にあれば常に相続人になります。
配偶者以外の相続人には順位があります。
| 順位 | 相続人 |
|---|---|
| 第1順位 | 子ども(代襲相続の場合は孫など) |
| 第2順位 | 父母などの直系尊属 |
| 第3順位 | 兄弟姉妹(代襲相続の場合は甥・姪) |
上位の順位の相続人がいる場合、原則として下位の順位の方は相続人になりません。
例えば、亡くなった方に配偶者と子どもがいれば、原則としてその方々が相続人です。
法定相続分の目安
| 相続人の組み合わせ | 法定相続分 |
|---|---|
| 配偶者と子ども | 配偶者1/2、子ども全員で1/2 |
| 配偶者と父母など | 配偶者2/3、父母など全員で1/3 |
| 配偶者と兄弟姉妹 | 配偶者3/4、兄弟姉妹全員で1/4 |
法定相続分は、遺産分割を考える際の基準です。必ずその割合どおりに分けなければならないわけではありません。
遺言書の内容や相続人全員の合意などによって、実際の分け方は変わる場合があります。
3.最初に確認したい「遺言書」
相続が始まったら、まず遺言書があるかどうかを確認しましょう。
遺言書には、主に次の種類があります。
自筆証書遺言
本人が法律で定められた方式に従って作成する遺言書です。
法務局の保管制度を利用していない自筆証書遺言は、原則として家庭裁判所での検認が必要です。
公正証書遺言
公証人が法律に従って作成する遺言書です。
家庭裁判所の検認は不要です。
法務局で保管された自筆証書遺言
自筆証書遺言書保管制度を利用したものです。
こちらも家庭裁判所の検認は不要です。
注意したいのは、封印された遺言書を勝手に開封しないことです。
検認が必要な遺言書を見つけた場合は、家庭裁判所での手続きを確認しましょう。
4.相続財産を調べる
次に、亡くなった方の財産を確認します。
預貯金だけでなく、不動産、保険、株式、借金なども調べます。
調査の手がかりになるものは、通帳、郵便物、固定資産税の通知書、証券会社からの書類、借入契約書などです。
最近では、インターネット銀行やネット証券、電子マネー、暗号資産など、紙の書類が残っていない財産もあります。
スマートフォンやパソコンに届いている契約通知なども、適法な方法で確認する必要があります。
財産が分かってきたら、一覧表を作ると整理しやすくなります。
| 財産の種類 | 確認すること |
|---|---|
| 預貯金 | 金融機関・支店・残高 |
| 不動産 | 所在地・名義・評価額 |
| 株式・投資信託 | 証券会社・保有銘柄 |
| 保険 | 契約先・受取人 |
| 借金 | 借入先・残高・保証人 |
| その他 | 自動車・貴金属など |
財産を調べる際は、借金や保証債務の有無にも十分注意しましょう。
5.借金がある場合は「相続放棄」を検討
亡くなった方に多額の借金がある場合、相続放棄を検討することがあります。
相続放棄とは、プラスの財産もマイナスの財産も原則として引き継がないための手続きです。
相続放棄は、原則として自分のために相続が始まったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述します。
また、相続には主に次の3つの選択肢があります。
- 単純承認:原則として財産も債務も引き継ぐ
- 限定承認:相続したプラスの財産の範囲内で債務を負担する方法
- 相続放棄:原則として財産も債務も引き継がない
限定承認は原則として共同相続人全員で行う必要があります。
なお、相続財産を処分すると単純承認したとみなされる場合があるため、借金が心配なときは、財産を動かす前に専門家へ相談しましょう。
3か月以内に財産調査が終わらない場合は、家庭裁判所に期間の伸長を申し立てられる制度もあります。
6.遺産分割協議とは?
遺言書による指定がない場合などに、相続人全員で遺産の分け方を話し合うことを「遺産分割協議」といいます。
例えば、次のような分け方があります。
- 実家は長男が相続する
- 預貯金は兄弟で分ける
- 不動産を売却して代金を分ける
話し合いがまとまったら、遺産分割協議書を作成することが一般的です。
不動産の相続登記や金融機関での手続きに必要になる場合があります。
遺産分割協議は、原則として相続人全員の参加が必要です。
相続人の一部を除いて進めると、協議が無効となる可能性があります。
話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所の遺産分割調停などを利用する方法もあります。
7.相続税は誰でも払うの?
相続税は、相続した方全員にかかるわけではありません。
基本となるのが「基礎控除」です。
基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数
例えば、相続人が配偶者と子ども2人の合計3人なら、
3,000万円+600万円×3人=4,800万円
となります。
相続税の課税価格の合計額が、この基礎控除額以下であれば、通常は相続税の申告・納付は必要ありません。
ただし、生命保険金の非課税枠や生前贈与、各種特例など、計算には細かなルールがあります。
また、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を利用して税額がゼロになる場合でも、申告が必要になることがあります。
相続税の申告・納付期限は、原則として死亡を知った日の翌日から10か月以内です。
不安な場合は、税務署や税理士へ相談しましょう。
8.亡くなった方の確定申告「準確定申告」
亡くなった方に所得税の確定申告義務がある場合は、相続人が代わって申告する「準確定申告」が必要になります。
期限は原則として、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内です。
例えば、亡くなった方に事業所得や不動産所得があった場合などは、確認が必要です。
年金を受け取っていた方でも、収入や控除の状況によって扱いが異なります。
全員に準確定申告が必要というわけではありません。
9.実家や土地の相続登記は義務化されています
ここは特に重要です。
2024年4月1日から、不動産の相続登記が義務化されました。
相続によって不動産を取得したことを知った日から、原則として3年以内に登記申請が必要です。
遺産分割が成立した場合には、その成立日から3年以内にも登記義務が生じる場合があります。
2024年4月1日より前に発生した相続も対象で、原則として2027年3月31日までが経過措置の期限となるケースがあります。
正当な理由なく申請義務に違反した場合は、10万円以下の過料の対象となる可能性があります。
遺産分割がまとまらない場合には、相続人申告登記という制度もあります。
「親の名義のまま何十年も経っている」という実家は、早めに確認しておきましょう。
10.相続の手続きはいつまで?期限一覧
| 期限の目安 | 手続き |
|---|---|
| できるだけ早く | 遺言書・相続人・財産の確認 |
| 原則3か月以内 | 相続放棄・限定承認 |
| 原則4か月以内 | 準確定申告(必要な場合) |
| 原則10か月以内 | 相続税申告・納付(必要な場合) |
| 原則3年以内 | 相続登記(対象不動産を取得した場合) |
※期限はそれぞれ起算日が異なります。相続登記には2024年以前の相続に関する経過措置もあります。
期限がある手続きを優先して、早めに準備しましょう。
11.松本市・安曇野市で相続に困ったら
松本市や安曇野市にお住まいの方は、内容に応じて次の相談先を利用できます。
松本市役所・安曇野市役所
固定資産税、亡くなった方の市税、住民票や戸籍など、行政上の手続きを相談できます。
長野地方法務局 松本支局
不動産の相続登記や登記制度について確認できます。
松本税務署
相続税や準確定申告など、国税に関する相談先です。
長野県司法書士会
相続登記、遺産分割協議書の作成支援などについて、司法書士への相談を検討できます。
長野県弁護士会
相続人同士の紛争、相続放棄など、法律上の問題を相談できます。
※相談内容によって、各機関で対応できる範囲が異なります。予約の有無や相談方法は事前に公式案内で確認してください。
12.相続でトラブルを防ぐための5つの心がけ
① 財産を隠さず、情報を共有する
預貯金や不動産、借金などの情報を相続人間で共有しましょう。
② 思い込みで話を進めない
「長男だから実家を相続するはず」などの思い込みは、トラブルの原因になります。
③ 感情的になったら時間を置く
相続には、お金だけでなく家族の思い出や長年の感情も関係します。
④ 期限のある手続きを後回しにしない
相続放棄や税金の申告など、期限を過ぎると不利益が生じる場合があります。
⑤ 困ったら専門家を頼る
家族だけで解決しようとせず、必要に応じて弁護士、司法書士、税理士などに相談しましょう。
13.まとめ|相続は「財産」だけでなく「家族のこれから」を考えること
相続という言葉を聞くと、難しい法律や税金の話を思い浮かべるかもしれません。
けれど、本当に大切なのは、残された家族が安心して暮らしていけることではないでしょうか。
財産の大小にかかわらず、必要な情報を整理し、家族で話し合い、ひとつずつ手続きを進めることが大切です。
慌てず、分からないことは相談しながら進めていきましょう。
よりみちくんのひとこと
「大切な人が残してくれたものって、お金や家だけじゃないと思うんだ。
一緒に過ごした時間や、教えてもらったこと、何気ない思い出も、きっと大切な宝物だよね。
相続の手続きは難しいかもしれないけれど、家族みんながこれからも笑顔でいられるように。
焦らず、ひとつずつ進めていこうね。」
次回のご案内
人生サイクル特別編③|実家・空き家の管理と処分完全ガイド
親から引き継いだ実家。
誰も住まなくなった家を、そのままにしておいても大丈夫なのでしょうか?
次回は、空き家の管理、固定資産税、売却、解体、相続登記、松本市・安曇野市の相談制度などを詳しくご紹介します。



コメント