第2話|白い小さな案内人――こまちゃん登場

信州よりみち物語

安曇野の小さな水辺で出会った四人は、そのまま一緒に歩くことになった。

よりみちくんは相変わらず先頭を歩き、気になる道を見つけるたびに足を止める。

「ねえ、こっちも行ってみようよ!」

「また?」

さよちゃんは笑いながらも、ちゃんと後をついていく。

わきみちくんは地図を開きながら、

「その道、たぶん林のほうへ抜けるよ」

と静かに言った。

かなちんは、道端に咲く花を見つけてはしゃがみ込み、写真を撮っている。

四人で歩く時間は、不思議なくらい自然だった。

まるで、ずっと前から一緒に旅をしていたみたいに。

しばらく進むと、道は少しずつ細くなっていった。

両側には草木が増え、町の音も遠くなっていく。

「静かだね」

かなちんが小さく言った。

「こういうところ、好き」

わきみちくんが答える。

そのとき。

カサッ。

草むらの中で、小さな音がした。

よりみちくんが立ち止まる。

「今、何かいた?」

「鳥じゃない?」

さよちゃんが辺りを見回す。

もう一度。

カサカサッ。

今度は、はっきり聞こえた。

そして次の瞬間。

白くて細長い小さな動物が、草むらからひょこっと顔を出した。

「あっ!」

かなちんが声を上げる。

小さな丸い耳。
つぶらな瞳。
ふわふわの白い毛。
首元には、なぜか鮮やかなピンクのバンダナ。

「かわいい……!」

さよちゃんが思わず近づこうとすると、その子はサッと草むらへ隠れた。

「オコジョかな?」

わきみちくんが言う。

よりみちくんは目を輝かせた。

「さっきの足あと、この子だったんだ!」

少し待っていると、白いオコジョはまた顔を出した。

今度は、ほんの少しだけ近い。

かなちんがしゃがみ込む。

「大丈夫だよ。何もしないからね」

優しく声をかけると、その子は首をかしげた。

そして――

とことこ。

ほんの少しだけ、かなちんのほうへ近づいてきた。

「わあ……!」

かなちんは息をのんだ。

ところが、その直後。

オコジョはくるりと向きを変え、細い道の奥へ走り出した。

「えっ、どこ行くの?」

数メートル先で立ち止まり、こちらを振り返る。

「……ついて来いってことかな?」

よりみちくんが言った。

わきみちくんも、その様子をじっと見ていた。

「たぶん、そうだと思う」

「じゃあ行こう!」

「やっぱり行くんだ」

さよちゃんが笑う。

四人は、白いオコジョの後を追った。


道は次第に山際へ近づいていった。

大きな木の根が張り出し、ところどころ石も増えている。

白いオコジョは軽やかに進み、時々こちらを振り返っては、

「ちゃんと来てる?」

とでも言いたげに待っていた。

やがて、その子は古い石垣の前で止まった。

草に覆われていて、注意して見なければ気づかない場所だった。

「ここ?」

よりみちくんが近づく。

石垣の間に、小さな木箱のようなものが見えた。

「何だろう」

わきみちくんが慎重に草をよける。

そこには、古びた小さな箱が置かれていた。

鍵はかかっていない。

四人は顔を見合わせた。

「開けてみる?」

かなちんが少し緊張した声で言う。

よりみちくんは、ゆっくりふたを持ち上げた。

中に入っていたのは――

一枚の古い写真。

そこには、今いる場所とよく似た景色が写っていた。

そして写真の裏には、小さな文字が書かれていた。

「また、みんなでここへ来よう。」

しばらく、誰もしゃべらなかった。

「誰が置いたんだろう」

さよちゃんがつぶやく。

「昔ここに来た人たちかな」

かなちんは写真を大切そうに見つめた。

わきみちくんは周囲を見渡した。

「もしかしたら、この場所にも物語があるのかもね」

よりみちくんが笑う。

「じゃあ、調べてみようよ!」

その声を聞いた白いオコジョは、うれしそうにその場をくるくる回った。

「この子、本当に案内してくれたんだね」

かなちんが言った。

「名前、どうする?」

さよちゃんが尋ねる。

よりみちくんは少し考えた。

「小さくて、ちょこちょこ動いて……」

かなちんが笑う。

「“こまちゃん”ってどう?」

白いオコジョは、ぴょんと跳ねた。

「気に入ったみたい!」

こうして、四人に新しい仲間が増えた。

こまちゃん。

小さな体で、誰よりも早く道の先を見つける、
元気いっぱいの案内役。

そして四人はまだ知らなかった。

古い写真に写っていた場所が、
これから始まる“信州の小さな謎”の、
最初の入り口だったことを。

――第2話・終

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