整え続けたものだけ見える景色
それから
さらに時間が過ぎた。
私の生活は
大きくは変わっていない。
朝、ノートを書く。
少しだけ文章を書く。
仕事をする。
夕方、公園に立ち寄る。
ただ
一つだけ変わったことがある。
私は
焦らなくなっていた。
以前の私は
未来を急いでいた。
何かを増やさなければ。
何かを手に入れなければ。
そんな思いが
いつも頭の中にあった。
だが今は
違う。
人生は
急ぐものではない。
整えるものだ。
そんな感覚が
自然にあった。
その日の夕方。
私は
いつもの公園に行った。
大きな木は
相変わらずそこに立っている。
ベンチに座ると
夕方の風が少し涼しかった。
私は
しばらく空を見ていた。
すると
一人の若い男が
ベンチの近くに来た。
少し疲れた顔をしている。
男は
私の隣に座った。
しばらく
二人とも何も話さなかった。
男は
小さくため息をついた。
私は
その顔を見ていた。
どこか
昔の自分に似ていた。
焦り。
迷い。
答えの出ない思考。
私は
少し空を見上げた。
夕方の空は
静かだった。
そのとき
ふと気づいた。
あの老人も
こんなふうに
空を見ていた。
私は
少し笑った。
そして
男に言った。
「成功法則を教えようか」
男は
少し驚いた顔をした。
私は
ポケットからノートを取り出した。
そして
一枚の紙を破った。
そこに
ゆっくり書いた。
毎朝十五分
頭の中を書き出せ。
男は
その紙を見ていた。
私は
静かに言った。
「人生は
増やすより整える方がうまくいく」
男は
少し考えているようだった。
私は
夕方の空を見上げた。
そのとき
ふと思った。
あの老人は
思考を拾っていたのではない。
人生を
整えていたのだ。
私は
ベンチの前を見た。
あの小さな芽は
もう立派な木になっていた。
風に揺れながら
しっかり立っている。
私は
静かに笑った。
そして
心の中で思った。
成功とは
何かを手に入れることではない。
焦らず
整えていくことだ。
夕方の風が
大きな木の葉を揺らしていた。
私は
空を見上げた。
そこには
ただ静かな時間が流れていた。
📖 思考を拾う老人 完
アーカイブ
思考を拾う老人|プロローグ 散らかった人生|人生を変えたい人へ最初の気づき
思考を拾う老人|第1話 止まった時計|人生が変わらない理由と最初の一歩
思考を拾う老人|第2話 成功の種|成功する人が最初にやっていること
思考を拾う老人|第3話 思考を書く|頭の中を整理するシンプルな方法
思考を拾う老人|第4話 最初の芽|変化が起き始める小さなサイン
思考を拾う老人|第5話 小さな一歩|人生を変える習慣の始め方
思考を拾う老人|第6話 周囲のノイズ|人に振り回されない考え方
思考を拾う老人|第7話 最初の三万円|小さな成功体験が人生を変える理由
思考を拾う老人|第8話 崩れなかった日|減ったときに崩れない理由
思考を拾う老人|第9話 静かな自信|自信が少しずつ積み上がる瞬間
思考を拾う老人|第10話 余白の力|頑張りすぎない方がうまくいく理由


コメント