思考を拾う老人|第9話 静かな自信|自信が少しずつ積み上がる瞬間

思考を拾う老人
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気づけば、揺れなくなっていた

それから数か月が過ぎた。

私は
相変わらず朝にノートを書き、
少しずつ文章を書き続けていた。

ブログの収益は
増える月もあれば
減る月もあった。

だが
以前のように
数字を何度も確認することはなくなった。

習慣は
静かに続いていた。

ある朝
ノートを書き終えたあと
ふと気づいた。

最近
焦ることが減っていた。

以前は
将来のことを考えると
胸の奥がざわついた。

このままでいいのだろうか。

間に合うのだろうか。

そんな思いが
いつも頭の中にあった。

だが今は
その感覚が
少し薄くなっていた。

将来が
はっきり見えたわけではない。

収入が
大きく増えたわけでもない。

それでも
どこか落ち着いていた。

その日の夕方。

私は
いつもの公園に行った。

老人は
ベンチに座っていた。

私は隣に座った。

しばらく
二人とも何も話さなかった。

夕方の空は
少し柔らかい色をしていた。

私は言った。

「最近
焦らなくなりました」

老人は
静かにうなずいた。

「そうだろう」

私は少し笑った。

「まだ何も
成功していないんですけど」

老人は
少し空を見上げた。

「成功とは
何だ」

私は
答えられなかった。

老人は
ゆっくり言った。

「焦らないことだ」

私は
その言葉を
しばらく考えていた。

焦らないこと。

それは
お金でもなく
地位でもない。

ただ
落ち着いている状態。

老人は
ベンチの前を見た。

あの芽は
ずいぶん大きくなっていた。

小さな葉が
何枚も出ている。

「静かな自信だ」

私は
その言葉を繰り返した。

静かな自信。

それは
胸を張るようなものではない。

ただ
揺れにくくなる感じだった。

老人は
立ち上がった。

帰るのだろう。

歩き出す前に
老人は言った。

「整ってきた」

それだけだった。

私は
しばらくベンチに座っていた。

大きな木の葉が
夕方の風で揺れている。

私は
ノートを取り出し
その日のページに書いた。


静かな自信。


それは
小さな言葉だった。

だが
私は分かっていた。

それは
急に手に入るものではない。

習慣。

信用。

時間。

あの三つの種が
静かに育っているのだ。

私は
夕方の空を見上げた。

そして
ふと思った。

もしかすると
人生というものは

大きく変わるものではなく

静かに整っていくもの

なのかもしれない。

次の話▶
思考を拾う老人|第10話 余白の力|頑張りすぎない方がうまくいく理由

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