思考の整理箱③第6話|言葉の奥にあるもの

思考の整理箱
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—言葉の奥にある感情を、そっと置く—

「時間がないんです。」

彼女がそう言ったとき、
私は反射的にこう返しそうになった。

「みんな同じだよ。」

正しい言葉だと思う。

今はどの案件も立て込んでいる。
誰もが余裕はない。

けれど、その日は少しだけ立ち止まった。

時間がない。
その言葉の奥に、何があるのだろう。


「時間がない、っていうのは
何が一番気になってる?」

彼女は少し考えてから言った。

「中途半端になるのが嫌なんです。」

その一言で、景色が変わった。

時間ではなかった。

彼女が守ろうとしていたのは、“質”だった。

雑に終わらせること。
手を抜いたと思われること。
自分の仕事を、自分で納得できなくなること。

それが怖かったのだ。


人の言葉は、いつも表面どおりとは限らない。

「忙しい」
「大丈夫です」
「問題ありません」

その奥に、
小さな不安や、守りたいものが隠れていることがある。

それを見ようとするかどうか。

それだけで、関係の質は変わる。


私はすべてを理解できるわけではない。

正解も、毎回わかるわけではない。

それでも、ひとつだけ意識している。

言葉を、そのまま受け取らないこと。

その奥に、もう一段あると信じること。


その日、結論は少しだけ変わった。

すべてを急がせるのではなく、
優先順位を一つ下げた。

大きな決断ではない。

でも、彼女の表情は少しだけやわらいだ。

人は、自分の望みを
そのまま言葉にできるとは限らない。

だからこそ、
わかろうとする姿勢が必要なのだと思う。


関心をもつこと。
見留とめる(認める)こと。
わかろうとすること。

その先にあるのは、
言葉の奥を見るということだった。

言葉の前にある感情を、
ほんの少し想像する。

それだけで、
関係は静かに、そして確かに変わっていく。

第1話|人は正しさでは動かない
→ 仕事の前に、人を置く。

第2話|理解されたと感じたとき、人は変わる
→ 正しさの前に、関心を置く。

第3話|あなたの失敗は、思っているほど見られていない
→ 失敗は、中心ではなく端に置く。

第4話|見るということは、認めるということ
→ 気づいた違和感を、流さずに置く。

第5話 本当にわかろうとするということ
→ わかろうとする姿勢を、先に置く。

第6話 言葉の奥にあるもの
→ 言葉の奥にある感情を、そっと置く。

その順番を変えるだけで、
関係は静かに変わっていく。
整理とは、消すことではなく、置き場所を決めること
と感じている。

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