思考を拾う老人|第6話 周囲のノイズ|人に振り回されない考え方

思考を拾う老人
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続けた者だけが、崩れなくなる

ブログを書き始めて
一週間ほど経った。

毎日ではないが
少しずつ文章を書いた。

思考ノートに書いたこと。

公園で考えたこと。

仕事帰りに感じたこと。

そんな
ささやかな文章だった。

読者は
ほとんどいない。

画面には
「閲覧数 1」と表示されていた。

その一人は
たぶん自分だ。

私は少し笑った。

それでも
書くことは嫌いではなかった。

思考を書く習慣も
続いていた。

朝の十五分。

それは
一日の始まりとして
悪くない時間だった。

だが
ある日。

会社の休憩室で
同僚にその話をしてしまった。

「最近ブログを書いてるんですよ」

何気なく言っただけだった。

同僚は少し驚いた顔をした。

「ブログ?」

「ええ、まあ」

同僚は笑った。

「そんなので稼げるの?」

私は少し困った。

「いや、まだ全然ですけど」

「今さら遅くない?」

その言葉は
軽い調子だった。

だが
心のどこかに残った。

その日の帰り道。

私は
少し気持ちが重かった。

やはり
無理なのだろうか。

五十八歳から
新しいことを始めるなんて。

公園に着くと
老人はベンチに座っていた。

私は隣に座った。

しばらく
何も言わなかった。

老人が言った。

「ノイズだな」

私は驚いた。

「分かるんですか」

老人は
小さくうなずいた。

「芽が出ると
必ず出る」

私は苦笑した。

「やっぱり
無理なんでしょうか」

老人は
少し考えてから言った。

「人は
自分の世界で話す」

私は黙って聞いた。

老人は続けた。

「やらない人は
やらない理由を話す」

私は
その言葉をゆっくり考えた。

たしかに
同僚は悪気があったわけではない。

ただ
自分の常識で話しただけだ。

老人は
ベンチの前を指さした。

そこには
昨日見た小さな芽があった。

まだ
そこにあった。

「芽は
静かに育つ」

「大きな音を
気にするな」

私は
その小さな芽を見つめた。

風が吹いても
倒れてはいない。

老人は
立ち上がった。

帰るようだった。

歩き出す前に
老人は言った。

「水をやれ」

それだけだった。

私は
しばらくベンチに座ったまま
考えていた。

ノイズ。

たしかに
これからも出てくるだろう。

だが

芽は
静かに育つ。

私は
ポケットからノートを取り出した。

その日のページに
こう書いた。


人の声より
自分の習慣を信じる。


夕方の空は
ゆっくり暗くなっていった。

私は
静かにベンチを立った。

まだ
芽は小さい。

だが
確かにそこにあった。

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