思考の整理箱③第5話|本当にわかろうとするということ

思考の整理箱

🌱 思考の整理箱③|正しさの前に、置くもの
仕事や人間関係の中で感じた小さな違和感を、
六つの物語で静かに整理していく記録です。

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—わかろうとする姿勢を、先に置く—

「それは今やるべき優先ではないと思います。」

彼女がそう言ったとき、
会議室の空気がわずかに張りつめた。

以前の私なら、すぐに答えていた。

「全体を見ると、今はこっちだ。」

正しさは、こちらにある。

そう思った。

けれど、その日は違った。

私は一度だけ、言葉を飲み込んだ。


「そう思った理由、聞いてもいいか?」

彼女は少し驚き、間を置いてから話し始めた。

「この案件を今動かすと、
他の二つが遅れる可能性があります。
それが怖いんです。」

怖い。

その言葉を聞いた瞬間、
私は初めて彼女の景色を見た気がした。

優先順位の問題ではなかった。
守りたいものの問題だった。

評価かもしれない。
責任感かもしれない。
チームへの思いかもしれない。

人は、自分が守りたいもののために強くなる。


私はよく「わかるよ」と言ってきた。

忙しいと言われれば、
「わかるよ。」

きついと言われれば、
「そうだよな。」

そのつもりだった。

でも、それは
“早くまとめたい”ときの言葉だったのかもしれない。

本当にわかろうとするには、
もう一歩踏み込む必要がある。

相手の言葉の奥にあるものを想像すること。

立場だけでなく、
その人が何を守ろうとしているのかを見ること。


その日、結論は大きくは変わらなかった。

でも、伝え方は変わった。

「わかった。
ここは私がフォローする。
その代わり、この部分は頼めるか?」

彼女は静かにうなずいた。

納得したわけではないかもしれない。

それでも、理解されようとしている感触は残った。


人は、完全な正解よりも、
“わかろうとしてくれた時間”を覚えている。

整理とは、消すことではなく、置き場所を決めること。

正しさの前に、関心を置く。
関心の先に、わかろうとする姿勢を置く。

それだけで、関係は少しずつ変わっていく。

次の話▶
第6話 言葉の奥にあるもの (最終話 作成中)

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