🌱 思考の整理箱③|正しさの前に、置くもの
仕事や人間関係の中で感じた小さな違和感を、
六つの物語で静かに整理していく記録です。
—失敗は、中心ではなく端に置く—
失敗は、夜になると少し大きくなる。
あの日の会議で、私は数字をひとつ言い間違えた。
すぐに訂正した。
場も荒れなかった。
それでも帰り道、その場面だけが何度も頭の中で再生された。
「なんで、あそこで間違えるんだ。」
「準備不足だと思われたかもしれない。」
「信頼を落としたかもしれない。」
ハンドルを握りながら、
私は一人反省会を続けていた。
翌朝、少し重たい気持ちで出社した。
誰かに何か言われるだろうか。
あの間違いを蒸し返されるだろうか。
けれど、何も起きなかった。
「おはようございます。」
いつも通りの挨拶。
いつも通りの空気。
あの場にいた彼女も、特に触れなかった。
拍子抜けするほど、普通だった。
数日後、私は思い切って聞いてみた。
「この前の会議、変なところなかったか?」
彼女は少し考えてから言った。
「え? 何かありましたっけ。」
本当に、覚えていないようだった。
私は笑ってごまかした。
帰り道、ふと思った。
自分が“人生最大の失敗”だと思っていた出来事は、
他人の人生では、ほんの一瞬だったのかもしれない。
思い返せば、私はいつもそうだった。
失敗を拡大して、
何度も再生して、
自分の中で大きくしていく。
でも、周りの人もまた、
自分のことで精一杯だ。
それぞれに守りたいものがあり、
それぞれに抱えている不安がある。
だからこそ、
誰かの小さな失敗は、思っているほど長く残らない。
もちろん、反省は必要だ。
次に活かすための振り返りは、大切だ。
でも、必要以上に抱え続ける必要はない。
失敗は、人生の中心に置くものではない。
少し端に寄せておけばいい。
整理とは、消すことではなく、置き場所を決めること。
あの夜、天井を見つめながら続けていた反省会も、
今は少しだけ、静かになった。
次の話▶
第4話|見るということは、認めるということ (作成中)


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