第10話|「まだ何者でもない。でも、もう戻らない」

人生アップデート

朝のコーヒーが、少しだけ美味しく感じられた。
それだけで、この日が悪くない日になる気がした。

ブログの管理画面を開く。
アクセス数は、相変わらず“爆発”とは程遠い。
けれど、ゼロではない。
昨日より、ほんの少しだけ前に進んでいる。

「…続けてるな」

ふと、そんな言葉が浮かんだ。
誰に言われたわけでもない。
自分が、自分に言った言葉だった。

以前の自分なら、
結果が出ない=意味がない
そう決めつけて、静かにフェードアウトしていただろう。

でも今は違う。

・記事を書く
・迷う
・直す
・出す
・また迷う

その繰り返しの中で、
“やめない自分”だけが、確実に積み上がっていた。

成上り、なんて言葉を使うと大げさだ。
お金も、名声も、まだ何もない。

それでも——
「何もしていなかった頃」には、もう戻れない。

過去の自分は、
やる前から諦める名人だった。
失敗する未来を、先回りして想像し、
動かない理由を集めるのが上手だった。

今の自分は、違う。
下手でも、遅くても、
一応、動いている。

それは小さな革命だった。

誰かに評価されなくてもいい。
急に人生が変わらなくてもいい。
ただ、自分で「やっている」と言える日々がある。

ふと、思う。

もしかしたら成上りって、
“上に行くこと”じゃなくて、
“下がらなくなった自分”を手に入れることなのかもしれない。

今日も派手な成果はない。
けれど、
キーボードを打つ手は、昨日より少しだけ迷っていない。

それでいい。
それがいい。

この物語は、まだ途中だ。
でも第10話まで来たという事実だけは、
誰にも否定できない。

——まだ何者でもない。
——でも、もう戻らない。

そう心の中で呟いて、
彼はまた、次の一文を書き始めた。

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